「外国人」ゆえの苦労は他人事ではない。
ハーバード大卒芸人のパックンが、米国大統領のスピーチや芸人の笑いのテクニックを解説しながら、日本人にも外国人にも通じる相手のハートをつかんで離さないトーク術を披露! 池上彰氏との「伝え方」対談も収録!
同じ外国人であるパックンが日本での経験を活かして書き下ろした1冊。
「パックンは外国人だけど、うちら日本人じゃん」
いやいやいや。
青年海外協力隊を目指すアナタ。
派遣国ではこっちが「外国人」ですよ。
日本に暮らす外国人だからこそ失敗したアレやコレを織り交ぜつつ、どうすれば人が動いてくれる“喋り”ができるか?を綴っています。
彼の視線を通して、任国での活動をちょっとだけ疑似体験。
活動に活かせる話術の基本を押さえるにはピッタリの1冊です。オススメ。
日本人同士で喋る英語やスペイン語とはワケが違う
日本は特に言語面において文化的背景の共通度が高い「ハイコンテクスト文化」。
1を言って10を知る文化。
途上国で活動する協力隊員は言語、価値観、倫理観、嗜好性がまるで違う異文化の中で暮らします。
それこそ100を言っても1も伝わらないかもしれません。
派遣前訓練では70日間みっちり語学を学びますが、それとて日本人同士での会話。
途上国での会話では、色んなことが通じなさすぎて絶望を味わうこともしばしばです。
(その予防のために派遣国で1ヵ月の現地語学訓練があるのですが、それでもぼくは足りませんでした)
だから、パックンの失敗談は共感できるし学ぶところも多い。
芸人である彼は、「どうやったら“ウケる”か?」「“ツカむ”にはどうすればいいか?」を本書で開示してくれています。
ぼくは環境教育隊員としてドミニカ共和国で活動しています。
そこで感じるのは「ドミニカ人はやたら美意識が高いのに、なぜごみを捨てるのか?」という疑問。
その答えのひとつが、「美意識が及ぶ範囲が己と己の周囲にとどまっていて、公共空間はほったらかしだから」です。
自分の家の中にごみがあるのは嫌だけど、家の前の通りにあるごみは気にしない、とか。
環境教育において如何に「ポイ捨てしない」ように行動変容を促すか?はぼくの活動のテーマですが、この本を通じてヒントが見つかりました。
ドミニカ人は笑いの沸点が低い
売れずに自信喪失した芸人さんは、ドミニカ共和国に来ればいいですよ!と言いたくなるくらい、ドミニカ人は笑い上戸。
動物の鳴きマネなんかすると、もうドッカーン!と笑いを取れます。オススメはロバ。
そんなドミニカ人ですので、とりあえず「楽しんでるうちに環境保護ができるようになった」となればいいのですが、そこのサジ加減が難しい。
ちょっと面白いこと、珍しいことがあると、100%そっちに意識が行ってしまう。
学校に行くと「カラテできる?」と聞かれるので、ちょっと型をしてあげる(ぼくがやってたのは少林寺拳法なのですが)と、もう授業中はぼくが近くを通る度に「カラテ、カラテ」と言ってきます。
集中力と持続力がないんです。
なので、ショートコントじゃないけど、今度から短めの(環境教育的な)ネタを用意して授業をしてみます。
パックンが紹介しているエトス、パトス、ロゴスの考え方のうち、ドミニカでの環境教育において感情に働きかける説得要素のパトスは非常にウエイトが高そうです。
途上国間でも環境に対する意識は違う
当然ですが、派遣国によって環境に対する意識も違います。
パックンは、ある文化に共通する価値観を見出す方法として「コモンプレイス」という言葉を使っています。
相手がよく使う言葉を手掛かりにコモンプレイスを探る方法として、ワードクラウドの活用も提示。
これは説明するより見た方が早いので、今回はエクアドル共和国とドミニカ共和国の環境省のサイトで実験してみました。
エクアドル共和国 |
ドミニカ共和国 |
エクアドルはボリビアやチリの文字が印象的。首都「キト」も読み取れます。対してドミニカは島国からなのか、他国の名前はナシ。
また、エクアドルは「Especies(種)」が目立つのに対し、ドミニカは「Recursos(資源)」が大きい。
これはドミニカ共和国の環境省にあたる役所が「環境天然資源省」だからでしょう。
お役所の管轄からも、その国の文化が見て取れます。
最後に、今回使ったワードクラウドサービスへのリンクも貼っておきます。
派遣前に調べておくと、着任後のとっかかりが掴みやすいかもしれませんね。
https://tagul.com
JICAボランティア2015年度秋募集は11月2日まで