2016年1月18日月曜日

迷惑職種の環境教育隊員は、タカクラ式コンポストを普及させられるのか?

「大音量で音楽を聞くことに、至上の喜びを感じているであろうドミニカ人」と思っていますが、ぼくには迷惑な騒音です。

お金でも夢でもなく

以前、「学校の牛乳パックを集めてリサイクル業者に売る」というプロジェクトが立ち上がりそうになりました。アルタミラ市内の学校では、毎日4000個の牛乳パックが廃棄されている(そんなに子どもが居るのか・・・)から、すぐにまとまった量が集まってお金になる!と息巻いていました。カウンターパートの息子さんが。

やるにあたって、ちゃんと洗ってから集めることを伝えておきましたが、そんなことは実行されず「集めたパックが臭い!」ということで、あっけなく頓挫。実際、牛乳パックの裏にも「洗って集める」って書いてるんですけどね。


環境保護活動に取り組む理由が「未来に自然を残したい」でも「お金になる」でも、けっきょく面倒くさいから求める結果に必要なプロセスが省かれるってのは、この1年で学びました。


思えば去年の2月、「タカクラやりたいの!」と言ったホストマザー(JICAの研修受講歴アリ)の要望に応え、一緒に材料を買い集め、家で作りましたが「台所に置くのは汚い」「見た目が汚い」などとの理由で物置に格納。結果、1週間ほどぼくが使ってるところを見せましたが、そのまま文字通りお蔵入りに。

そんな苦い想い出を辿りながらも、こんかいチョコララメンバーが所属する自治会でタカクラ式コンポストの紹介をホストマザーにやって貰うことにしました。


捨てた・・・だと?

こんかいのタカクラ式コンポスト再挑戦は、チョコララのカカオの小路整備が発端。工場敷地内の道路に接する斜面から石を集めて小路をつくったのですが、今度は、その斜面の土壌流出が気になる、と。思えば石がゴロゴロ転がっていたため、荒涼としていました。バナナやカカオの木がポツポツあって、その隙間に、ところどころアビチュエラ(豆)が植えられてたりするくらい。


そこで、土を肥やし、花を植えるなどして外国人観光客が来たときに「お!」と思うようなエントランスにしようと考えてるわけです。これはぼくの発案ですが、「外国人観光客の視点」を持ち合わせているのはぼくだけなので致し方ないかと自問自答。今後は訪れた観光客にアンケートを取るなど、地元住民のアイデアの種になるような動きに切り替えていく必要があるかな。

コンポスト自体の役割をチョコララメンバーに話し、「詳しい知識や技術は、ホストマザーが持ってる!」とお膳立て。先日の会議で、無事にチョコララメンバー&ホストマザー間で情報共有され、コトが進むことになったのです。

そういう前段があって、こんかいのタカクラ式コンポスト再挑戦。ホストマザーに「前につくったコンポスト、まだ置いてある?」って聞くと「掃除のときに孫が捨てた」とサラリ。

チーン。

「もう1回、材料集めからかー。めんどくせー」と想いながら情報を漁ってたら、JIBURiの宮﨑大輔くんがいいこと書いてた。


文化や習慣の違いを理解する大切さ


さすが三度の飯より美女が好きな苺ソムリエにして、元JICAボランティア農業隊員。勉強になる。

(1)日本人専門家は、効果を高めることを目指している

日本人の専門家は、既存のコンポストよりも分解速度を早めたり肥料効果を高めることが目的で、高倉式コンポストを普及しようとする。

日本人にはトヨタで有名な「改善」の思想が染みついているからだ。

より効果が高い肥料、より分解が早いコンポスト、より臭わない生ゴミ処理方法を追及してしまう。

(2)途上国の村人は、作業を減すことを目指している

しかし、発展途上国の村人の多くが願っていることは、日本人専門家とは違ってる。

彼らが望んでいることは、作業を減らして労働を楽にすることだ。

途上国の田舎に住む村人は、日本人とは価値観が違う。

より少ない材料で作れる肥料、より少ない工程で作れるコンポスト、より楽にできる生ゴミ処理方法を求めている。

―― 高倉式コンポスト(JICA推奨の微生物発酵液型)を、容器が不要で簡単な作り方へ改良したコンポスト有機堆肥の作成方法 / JIBURi.com


この指摘はぼくが体験した牛乳パックでも言えることで、ドミニカ人はベターよりイージーを選ぶ傾向にある。たとえ金になろうとも、面倒くさいことは嫌いなのだ。

ほかのドミニカ環境教育隊員と話したことあるけど、環境教育って基本的に“迷惑”な職種である。地域に出向いていって「ごみを捨てないでください」と言ったって、誰やねんオマエ!メンドクセぇ知るかーってなる。未来を見通している住民と、そうでない住民との板挟みになりかねない、悶々とする日々。

かと言って、農業の専門家でもないのでコンポストについてだって、宮﨑くんが指摘するような根底にある理論への知識や理解を、今は持ち合わせていない。が、時は進む。ドミニカ人は「今、まさに今」を生きる人々なので、鉄は熱いうちに打たなければならないというのが実感でもある。

大切なことはマニュアルを学ぶことではなく、その根底にある理論を学ぶことである。

青年海外協力隊の農業系隊員や環境教育隊員には、マニュアルや教科書に従って既存の技術を教えるのではなく、実践しながらその地域にあった新しい技術を編み出してもらいたい。

そのためには、体系的な知識が必要になるので、自分で勉強しないといけない。

この指摘は、とても示唆に富んでいて、結局、環境教育隊員は現地住民の行動を如何に変容させていくか?という根本的課題に向き合って、あの手この手で失敗しながら進んでいくしかないと改めて思わせてくれる。幸い、タカクラ式コンポストの(その是非は置いといて)知識・技術はドミニカ人に渡っている。それを使うも使わないも、広めるも広めないも、すべてはドミニカ人次第。

環境教育隊員はドミニカ人同士の板挟みになるのではなく橋渡しとして動き、彼ら・彼女らに未来を共有させ得る想像力を養う手助けができれば御の字だろう。そのために必要な知識は活動ごとに違うけれど、当面のぼくにとっては、チョコララという地域資源を地域のみんなで如何にブラッシュアップしていくか?にスポットを当てる。たとえば荒れた斜面を1人1人はどんな風にしたいのか?という問いのもと、そうだ、塗り絵大会でも開いてみようか。