2016年3月8日火曜日

「保育園落ちた日本死ね!!!」と「保育士辞めたの私だ」の間にあるダークマター

保育士の過酷な職場が浮き彫りにされてますね。


「フツー」のレベルを上げよう

フローレンスの駒崎さんが指摘するように、自治体と担当職員がどっちを向いているかも大きな要因でしょう。

また、自治体が独自の無意味なルールを勝手につくって、それが参入障壁を上げています。

例えば杉並区は、小規模認可の園長基準に「6年間『継続して』保育業務に携わった経験」を求めています。半年でも業務を離れたらアウト。育休も取れないことになり、馬鹿げています。

なぜこうした事態が起きるかと言うと、待機児童の常態化によって、「待機児童が解消できなくても、担当者の評価はマイナスにならない」ためです。一方で、保育所で事故や突然の事業者撤退があり問題になると、評価に大きく影響します。

すなわち、自治体(と担当職員)からすると、園を増やそうというインセンティブよりも、間違いのない事業者を選別する方が強い動機となり、参入を抑制するのです。

―― 「保育園落ちた日本死ね」と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由 / 駒崎弘樹

自治体職員もヒトの子ですから、そりゃ自分の仕事がマイナス評価にならない様に行動するのは分かります。ただ、保護者と子ども、保育士の悲鳴が上がる日本の様子を途上国から見ていて思うのは、「『フツー』がどこに置かれているか?」ということです。

ここで、ちょっとドミニカの話を。


ドミニカ人、老若男女、踊ります。バチャータ&メレンゲ。子供のリズム感ハンパねぇ。
ドミニカ人、老若男女、「チノ、チノ(中国人、中国人)」とぼくのことをバカにします。
ドミニカのお寿司、うーん、微妙です。

ドミニカ人にとって踊ることはフツーなので、全体のレベルが高い。
ドミニカ人にとって日本人は馴染みが薄い(フツーじゃない)ので、何故か分からないけれど「チノ、チノ」と言ってバカにします。
ドミニカではお寿司屋さんの絶対数が少ない(フツーじゃない)ので、そんなにレベル高くない。

「チノ」とバカにしてくる子供に「どこに中国人が居るの?」と聞くこと数知れず。バカにされることがフツーなので、だんだん問いただし方とか上手くなってきました。

今の日本で他人の子供を叱ることって、けっこうタブーっぽくなってるのでは?

ドミニカでは他人の子供だろうが何だろうが、悪いことは悪いと叱ってます。なので、ぼくもお構いなしに注意してます。なので、叱るレベルが上がってきた

保育士の職場環境が悪いことの原因の1つに、他人の子供を叱らない/叱れない日本の社会の雰囲気があるのでは?と思うのです。

寿司もろくに食べたことないドミニカ人に、寿司のことを語られたところで納得できない日本人のぼくです。そう、ドミニカ人の寿司に対する経験値が足りないから「的外れ」なことを言われるのです。

他人の子供をろくすっぽ叱ったことのない親が多いから、保育士さんも余計なパワーを使うのでは?と思うのです。他人の子供を叱るということは、自分の子供も他人に叱られるということを受け入れることで成り立つのでは?ドミニカでは、それがフツーです(保育の技術レベルは日本の方が高いですよ)。

なんだか取り留めのない話になりました。

ぼくには子供が居ませんが、例えばボリビアで幼児教育職種として活動している青年海外協力隊の同期になら、自分の子供を安心して預けられると思います。根底で保育士さんを信頼しているとよっぽどでない限り「先生がウチの子を叱ったこと」に対して口を挟む余地はないだろう、と。

そもそも、「他人から自分の子供が叱られること」について免疫があるか、保育をサービスと位置付けるならサービスを受ける側も、それなりに素養が必要ということです。日本国民全体として寿司の経験値がたくさんあるから、それなりにクオリティが高く、かつ安い回転寿司が全国にあるんです。

保育園落ちた日本死ね!!!」も「保育士辞めたの私だ」も分かるし、大切なことだと思いますが、その2つの間にモヤモヤしたもの、ダークマターがある気がするので書いてみました。

宇宙が何でできているかを調べてみると、われわれが知っている、陽子や中性子など”目に見える”(観測されている)物質は全体の約5パーセントにすぎません。その5~6倍は未知の物質(ダークマター)が占めていると考えられます。残りはダークエネルギーと呼ばれている正体不明のものです(図1)。これまで宇宙の観測に利用されてきたのは、主に光やX線、赤外線などの電磁波ですが、”暗黒”物質というのは、電磁波での観測では見ることができないため、”暗黒(ダーク)”という呼び名がついています。

―― 宇宙で目に見える物質はたった5% / XMASS「ダークマターとは?」


働き方を見直そう

とは言え、直接の受益者である子供を守るには家族のくらし自体の足腰を強くしないと。元保育士さんの声。

パートなら復帰考えるけど正規なんて絶対もう無理だ…。

独身時代、実家暮らしだったから夜中2時3時まで書類書いたり土日つぶして製作物作ったり出来たけど家事育児しながらなんて私には無理だ‼︎

たとえ賃金あがったとしても絶対戻りたくない

―― T_fam@3歳♂&6ヶ月♂

製作物なんか自分が働く園の保護者にクラウドソーシングできたら少しは楽になるんでしょうが、やたらクオリティを求めたり、自己表現を恥ずかしがる傾向にある日本人には難しいのでしょう。

サービスや質自体のハードルを少し下げると、また違った風景が見えるはず。

ドミニカで作ったおせんべい

待機児童や職場復帰の問題は、ワークライフバランスが背景にあると駒崎さんも言ってます。全体像と対処法を俯瞰するのに、良い1冊があるので紹介しておきます。

成果を上げる秘訣は、「家庭」にありました。

共働き&子持ち経営者2人が悪戦苦闘の果てに生み出した生活術
見えてきた 新しい夫婦のカタチ……

景気や社会のあり方の変化から、カップルが二人で働く「共働き」が当たり前になりつつある時代。
ワーキングカップルの実践者であり、働き方変革のプロでもある(株)ワーク・ライフバランス代表取締役の小室淑恵さんとNPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんの二人が、男女双方の立場を踏まえ、自身が実践している「生活術」を紹介。
不安的な時代を夫婦でタッグを組み、主体的に、そして楽しく生きていくための知恵と勇気が得られる1冊。

「考え方から小ワザまで、全部入れました」(小室)
「ああ、結婚前に読みたかった!(笑)」(駒崎)