日本と欧州で異なるカカオを取り巻く状況
――― 日本でレインフォレスト・アライアンス認証マーク付きのチョコレートって売っていますか?
堀内さん:残念ながら、現在日本ではメジャーなお菓子メーカーでの認証カカオの取扱がございません。製菓材料を販売されているピュラトスジャパンが、洋菓子店等向けの認証チョコレートを販売しています。
ノワール・コレクシオン・コスタリカ / オリジン・コレクション
―― 画像引用:ピュラトスジャパンHPより
――― コーヒー等では広まってきた気がしますが、カカオではなかなか無いのですね。理由や要因等は何でしょう?
堀内さん:カカオが広まらないのは残留農薬と価格の問題です。残留農薬は業界の努力もあり、かなり問題は収まってきたと聞いていますが、ヨーロッパではポッド(注釈:カカオの実)内で実際使用する豆で測るのに対し、日本ではポッド表面で測ることから当然残留農薬の数値があがるので、(検査に)引っかかるケースが多くなります。そのため、それを見越して多めにカカオを保有していなければいけない事情があります。
また、チョコレートの価格も多少重量が異なるとはいえ、ヨーロッパでは板チョコ1枚300~400円は普通ですが、日本では定価100円程度、安売りで88円と言った形で価格競争が激しく、原料にお金をかけられません。
過去にもロッテ様から、「エコチョコ」という商品(レインフォレスト・アライアンス認証農園産カカオ使用)を発売していただきましたが、価格が通常の2倍近かったこともあり、販売が伸びず廃番になった経緯があります。
こういった事情でフェアトレードやシングルオリジンの商品もでていますが、メジャーな商品ではコーズマーケティング付(チョコの売り上げの一部を寄付する)以外は見られないのが現状です。
日本の企業、消費者双方の意識改革が一番必要かと思いますが、すぐには動かない、難しい状況です。
――― そういった背景があったんですね。ありがとうございました。
時代に先駆けたロッテの「エコチョコ」
「エコチョコ」はぼくもむかし購入しました。でも、たしかに割と早い段階で見なくなったかも。
ロッテさんのHPによると、「エコチョコ」はエコ商品開発の一環として2009年に発売されたとのことですが、個人的には今にして思えば「少し時代が早かったのかな?」と。
2009年と言えば、その前年に洞爺湖サミットが開催され、教育界では中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」(答申)が現れ、環境教育の注目度がグッと上がった頃でした。当時のぼくも、環境教育の視点で共感を覚えて「エコチョコ」を買った気がします。
たしかにレインフォレスト・アライアンスは環境に配慮した農業を推進していますが、それだけではありません。また、「エコ」を全面に押し出した商品として売るには時代が追い付いてなかった、と思うのです。
日本の当時のエコを考えた場合、どちらかと言うと「節約」に意識の多くが割かれていた様に思います。節約=お金をかけない。なので、プレミアが存在するレインフォレスト・アライアンス認証のカカオを使った「エコチョコ」の価格帯は消費者に訴求しなかったのだろうと。
その後、日本では東日本大震災を経て社会的課題を解決する「ソーシャル」の意識が広がりました。1人1人が自分のお金を使って共通の問題を解決する。この意識があるのとないのとでは随分と違いがあります。今ならまた違った消費者の反応が返ってくるのでは?と思っています。エコも手段であって目的ではないですからね。このあたり、今度はロッテさんにもう少し詳細を聞いてみよう。
また、残留農薬の問題は全然知りませんでした。勉強になります。調べてみると、JICAでもガーナで残留農薬関係のプロジェクトしてるんですね。
お忙しいなか丁寧に対応して頂いた堀内さん、ありがとうございました!